□明治時代に首都東京の事務所街の起点となった三菱一号館が、2010年春、19世紀パリを中心に育まれた近代美術を主な収蔵品とする美術館として蘇りました。本書は時代を感じさせる洋館の中を飾る、選び抜かれた名作を紹介します。
□コレクションの中核をなす8つの分野別に章立てしています。
□作品が生まれた背景を知ることで、鑑賞をより滋味深いものにできます。本書では、工業化が進み、都市が発展し、大量消費社会が到来した時代と照らし合わせて、コレクションの中から近代美術のいくつかの側面を切り取って西欧文化を紐解きます。
□企業と美術館、街と美術館など、美術館活動から文化論に至る対談や、美の目利きの方々の作品への愛情が伝わるコラムなども充実しています。

はじめに──三菱一号館美術館のコレクションについて
特別対談１　高階秀爾（大原美術館館長）
　　　　　　　×
　　　　　　高橋明也（三菱一号館美術館館長）
　──コレクションは美術館の“生命”──
　　　　●「美術館らしい美術館」をつくる
　　　　●美術館は“異文化理解の装置”である
　　　　●ひとつの場所に集めると新しい世界が見えてくる
　　　　●企業美術館としての役割

三菱第一号館──丸の内を洋風事務所街に変えた明治建築
　　　　新しい街へ――近代化の第一歩
　　　　「一丁倫敦」の誕生
三菱一号館美術館の誕生──第一号館が美術館に生まれ変わるまで
　　　　解体、そして復元までの日々
　　　　美術館としてふさわしい空間へ――


Collection1　アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
　　　　●石版画（リトグラフ）集『彼女たち』──ロートレックの版画芸術の粋
　　　　●モーリス・ジョワイヤン・コレクション
　　　　●ジュール・ルナール『博物誌』
　　　　【コレクションから紐解く19世紀美術（1）】19世紀末のパリ
　　　　【わたしのお気に入り】《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》
　　　　　　　　　　　　　　　服部一成さん（グラフィックデザイナー）


Collection2　オディロン・ルドン
　　　　●グラン・ブーケ（大きな花束）
　　　　●黒の画家ルドン
　　　　【コレクションから紐解く19世紀美術（2）】画家とコレクター
　　　　【わたしのお気に入り】《小舟》
　　　　　　　　　　　　　　　真野響子さん（女優）


Collection3　フェリックス・ヴァロットン
　　　　●ナビ派時代の油彩画
　　　　●大胆な木版画──ヴァロットンと木版画の復興
　　　　●親密な室内──ヴァロットンの木版画の頂点『アンティミテ』
　　　　【わたしのお気に入り】《フルート（楽器2）》
　　　　　　　　　　　　　　　中野京子さん（作家、ドイツ文学者）


Collection4　ナビ派を中心とする19世紀末版画
　　　　●モーリス・ドニ──『アムール（愛）』
　　　　●ピエール・ボナール
　　　　●『レスタンプ・オリジナル』──世紀末パリの芸術を映し出す画期的な版画集
　　　　【コレクションから紐解く19世紀美術（3）】版画作品を楽しむために
　　　　【わたしのお気に入り】ボナール『平行して』
　　　　　　　　　　　　　　　山本容子さん（銅版画家）


Collection5　ジョン＆ミヨコ・ウンノ・デイヴィー・コレクション
●ジャポニスムのお茶会──主（あるじ）の世界観を演出する調度品
　　　　●日本へのあこがれ──ジャポニスムの陶磁器を支えた創意工夫
　　　　●日本の美しき花、朝顔──欧米の人々を魅了したはかない花姿
　　　　【コレクションから紐解く19世紀美術（4）】ジャポニスムのモティーフ
　　　　【わたしのお気に入り】《朝顔形鉢》
　　　　　　　　　　　　　　　小山登美夫さん（ギャラリスト／小山登美夫ギャラリー代表）


Collection6　西洋の近代絵画
　　　　●19-20世紀美術のコレクション──作品が語りかける画家たちの姿


Collection7　日本の近代絵画
　　　　●洋画コレクション──明治期の洋画界を牽引した画家たち


Collection8　ジャポニスム貴重文献
　　　　●欧米を席巻したジャポニスム──欧米の日本ブームを今に伝える同時代文献
　　　　●異邦人たちの目を通して紹介された日本の文化、芸術


特別対談２　蓑豊（兵庫県立美術館館長）
　　　　　　　×
　　　　　　高橋明也（三菱一号館美術館館長）
　──街と美術館のステキな関係──


三菱一号館美術館　館内ガイド
　　　　Caf? 1894
　　　　Store 1894
　　　　三菱一号館歴史資料室
　　　　三菱センター デジタルギャラリー

INDEX／主要参考文献