もっと知りたいミレー
- 価格
- 1,980円(税込)
- 刊行
- 2014年04月
- ISBN
- 9784808709778
- Cコード
- 0071
- 判型
- B5
- ページ数
- 80
内容
□19世紀、フランスのバルビゾン派の画家の中でも最も愛される画家ミレーの画業を傑作とともに紹介する入門書。近年の研究成果を踏まえ、ミレー神話の解体と再生を試みます。そこから見えてくるのは、二度と戻れない故郷への思い、痛烈な喪失感、鎮魂と復活への願い、そして何より描く喜びと自然との一体感──。優れた芸術作品は時代を映しだすとともに、時代を超えて見る者の魂を揺さぶることを教えてくれます。
□ミレーは「農民画家」として知られますが、目に見えない神秘に対する関心も深く、ロマン主義を継承し印象派や象徴主義を先取りするような瑞々しい風景画も描いています。ミレーは、光が同時に闇を強調し、情景に神秘的な性格を与えることを熟知していました。村はずれに広がる満天の星空を愛でる感性、何気ない自然の美しさを見つめる繊細な眼差しは必見です。パステル画家としての才能も見過ごせません。いま一度、過去に定着したイメージにとらわれずに見直したい画家です。
目次
ミレー、この不思議な画家──神話の解体と再生
chapter0 ミレーの原点──幼少期と修業時代(1814-1840年)
[もっとしりたい・1]農民画の変遷
chapter1 バルビゾン以前──貧窮のなかで(1841-1848年)
肖像画家として出発
「華やかな手法」の時代
二月革命と無鑑査サロン
chapter2 バルビゾンへ──農村の人々を描く(1849-1855年)
農民の日常を描く
働く女性という主題
帰郷と米国人
1855年パリ万博
●傑作クローズアップ《種をまく人》
[もっとしりたい・2]ミレーとゴッホ
[もっとしりたい・3]バルビゾン派
chapter3 農民画家ミレー──賛否両論のなかで(1856-1865年)
批判と賛辞の狭間で
信仰と《晩鐘》
子どもへのまなざし
サロンでの成功
連作「四季」
[もっとしりたい・4]ミレー神話
●傑作クローズアップ《落ち穂拾い》
[もっとしりたい・5]ミレーの黄昏と夜
chapter4 自然を描く──郷愁のなかで(1866-1875年)
人物から風景へ
パステル画の時代
親友ルソーの死
晩年の風景
知られざるミレー
望郷の念
●傑作クローズアップ《春》
epilogue ミレーの遺産
column
ミレーとオールドマスター
ふたりの妻
未来の伝記作者との出会い
ミレーと複製芸術
ミレーの静物画
著者プロフィール
1953年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究修士課程修了。東京都美術館館長。国立西洋美術館学芸課長、三菱一号館美術館初代館長等を経て、2021年より現職。専門はフランス近代美術。1984~86年、オルセー美術館開館準備室に勤務。2010年にフランス芸術文化勲章シュヴァリエ受章。主な企画展覧会に「ドラクロワとフランス・ロマン主義」(1989年)、「1874年―パリ、〈第一回印象派展〉とその時代」(1994年)、「オルセー美術館展」(1996年、1999年、2006~07年)、「ジョルジュ・ド・ラトゥール―光と闇の世界」(2005年)、「コロー 光と追憶の変奏曲」(2008年)、「マネとモダン・パリ」(2010年)他。著書に『ゴーガン―野生の幻影を追い求めた芸術家の魂』(六耀社)、『もっと知りたいマネ』(東京美術)、『美術館の舞台裏―魅せる展覧会を作るには』(筑摩書房)、『新生オルセー美術館』(新潮社)他。
1969年生まれ。財団法人ひろしま美術館学芸員、岩手県立美術館専門学芸員を経て、現在、三菱一号館美術館上席学芸員。専門はフランス近代美術。主な担当展覧会に「モネ―睡蓮の世界」(共同監修、2001)、「シャルダン―静寂の巨匠」(2012)、「ルドン―秘密の花園」(2018)、「全員巨匠!―フィリップス・コレクション展」(2018)、「1894 Visions ルドン・ロートレック展」(2020)など多数。「ルドン―秘密の花園」では第13回西洋美術振興財団賞「学術賞」を受賞した。主な著書に『もっと知りたいモネ―生涯と作品』『モネ作品集』(東京美術)、『ルノワールの犬と猫―印象派の動物たち』(講談社)、『図説 モネ「睡蓮」の世界』(創元社)、共著に『モネ入門―「睡蓮」を読み解く六つの話』(地中美術館)、『地中美術館』(公益財団法人福武財団)がある。